好きで始めた仕事だったのに、「忙しすぎて何をしているのかわからなくなる」「働いても働いても現状維持が精一杯」そんな状況は、ハンドメイドやモノを作って売るタイプの活動で起業した方なら痛いほどわかるのではないでしょうか。
クリエイターで起業したい方、とくにハンドメイドやモノを作って売るタイプの活動で起業を考えている方、すでに起業されている方には、まさに読んでいただきたい一冊です。今回はマイケル・E・ガーバーの「成功する人たちの起業術 はじめの一歩を踏み出そう」という本のご紹介をします!

起業家の三つの人格
この本は、「サラ」というアップルパイを焼くのが得意で、パイ専門店をオープンして起業した人物が登場します。経営を進めていくなかで様々な困難や悩みが出てきて、それに対してマイケルガーバーがアドバイスするという形式で本が進みます。
サラはこのような状態です。好きで始めた仕事だったのに、「忙しすぎて何をしているのかわからなくなる」「働いても働いても現状維持が精一杯」。
そんな状況は、ハンドメイドやモノを作って売るタイプの活動で起業した方なら痛いほどわかるのではないでしょうか。筆者もハンドメイドで起業したので、このような悩みや苦しみは骨の髄まで味わってきました。
「忙しくて嬉しい悲鳴だね」なんて言葉がありますが、それは時間が経つにつれて「ただの悲鳴」となるのです。
この本で重要となる点は以下の引用部分です。
事業を立ち上げようとする人はみんな三重人格だと思っている。
「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E. ガーバー、Michael E. Gerber、 原田 喜浩 (2003/5)
「起業家」「マネージャー」「職人」の三つの人格をもっていて、どの人格も主役になりたくてうずうずしている。
「起業家」は夢をみる人。未来に住む人のこと。
「マネージャー」は管理が大好き。過去に住む人。現実主義者で変化を嫌う。
「職人」は手に職をもった個人主義者。
起業家は皆、この三つの人格をもっていてその使い分けとバランスが大切だというのです。
自分の中の「職人」は目の前の作業に没頭します。そうしないと作品は完成しないからです。この技術があって全てが成り立っているのだから、つくることが一番大事だといい、何かから逃げるように作業に没頭してしまのです。
こうしたい!こういう展開がしたい!と「起業家」が騒ぎます。案だけ出して具体的に進めなかったり、突拍子も無く初めてしまって自分でも後で驚くこともあります。
「マネージャー」は管理をします。制作の進め方、工房の整理整頓、納品したり、新しいスタッフを雇ったり、お金の計算をしたりします。ただでさえやることが多いのだから余計なことは増えないで欲しいと思うのがマネージャーです。
ビジネスを始める人の10%が起業家タイプ、20%がマネージャータイプ、70%が職人タイプだと書いてあります。
クリエイター起業をする方は、何かしらの技術があり起業をしようと思ったはずです。大体の方は「これが好きだから、得意だから、この分野で起業しよう」と思った「職人」タイプの起業家に当てはまるでしょう。
しかし、最も主導権を持つべきでない人格は「職人」
マイケルガーバーの本では「職人」が起業するから失敗するのだと言い切っています。
アップルパイ屋さんで働いていて、アップルパイをつくるのは店長よりも上手だ。「この技術があるから、店長よりも成功できるはず!」という職人目線だけの起業が最も危険であり、失敗しやすいのです。
事業を経営することと、アップルパイが上手に焼けることは全く別のことなのです。
「とはいえ、アップルパイを上手に焼けなければ誰もお店に来ないでしょ」
「いいアップルパイを焼ければお客さんが来るはず」
これが「職人」の考え方なのです。そしてこの考え方で起業すると様々な困難に悩まされることになるのです。筆者はフィギュアを作る職人タイプで起業したのでまさに同じような考え方で起業し、本に書いてある内容の悩みが見事に目の前に出現しました。
解決策は「仕組み化」
忙しいから勇気を出して人を雇っても、結局は作業が遅かったりクオリティが低かったりして「自分でやった方がはやい!」なんて思うことでしょう。それが「職人」の人格なのです。
そこに「マネージャー」という人格を発揮させて、作業を分解して、整理して、ひとつひとつの作業だけで見れば「誰にでもできる」レベルまで落とし込むのです。今までは感覚や経験でこなしていた作業、頭の中にあった作業手順もひとつひとつマニュアルにしていきます。これが仕組み化です。
この段階で「職人」は騒ぎます。「こんなの面倒だし、時間がかかり過ぎる」と。ここで辛抱して、自分でマニュアルを整理します。
その次のステップでは、教えた人にマニュアルを作ってもらうのです。自分では当然のようにやっていた部分も、初心者の目線で見た作業手順が浮かび上がって来るからです。
しかし、雇われている人からしたら「マニュアル作り」も仕事のひとつで賃金が発生していますが、雇っている側からすると「マニュアル作り」は一円も生み出していません。はやく生産をしてほしいという気持ちがありながらも、ここが頑張りどころでありますし、筆者も本当に苦労した点です。後々、必ず役にたちます。忙殺されているあなたを救うアイテムとなるのです。
起業家の人格を発揮させて事業の構想を考えよう
この本では、「一万店舗に増やすにはどうすればいいか」という考え方で話を進めます。流石に一万店舗も増やさなくていいとも思うのですが、重要なのは「誰がやっても同じようにできて、どこでも仕組みが働くようにする」という点です。
自分だけの「職人技」、そして職人技の「教え方」、接客するときに言う「言葉」全てをマニュアル化して仕組みを作ろうというのが、この本の趣旨であり、私たち起業家が発展するための鍵となるのです。
クリエイター起業をすると「職人」が作業ばかりしてしまって、忙しくて新しいことに手を出す時間も余裕もなくなってきます。
そこにマネージャーの人格を発揮させてマニュアルを作り「仕組み化」をします。
そして、少しだけ余裕を生み出して「この事業を発展させるにはどうしたらいいか」という「起業家」の人格で事業のことを考えていきます。
「起業家」の人格は誰にも任せることができないので、起業をするなら「起業家」の人格部分に一番時間をかけるべきだと書いてあります。
日々、忙しいのはわかります。痛いほどわかります。筆者は美大を卒業して21歳ですぐに起業をして、スタッフを雇い、マニュアルを整備しました。通常で16時間労働、ひどい時は一日20時間労働をしている日々もありました。その生活スタイルがあまりにも過剰だったため26歳にして若干生え際が後退してきたので、これはまずいと思い改善しました。多い時は30名のスタッフがいました。
自分のスタイルを見直してみる
「職人」としてどんなに忙しい日々でも、「マネージャー」の人格で「仕組み化」を念頭に置いてどうすれば自分がいなくても回るようになるかを考え、「どのように発展させていくのかを考える」のが「起業家」の人格です。
「起業家」の人格を代わってくれる人はいません。自分なのです。忙しいのはわかりますが、そこに考えを集中できるように少しづつ体制を変えていきましょう。
ここまで読んでいただいて、「今、自分の中でこの3つの人格のどれが一番強くなっているだろうか」と考えてみることはとても大切です。
これからクリエイター起業を考えている方。
そしてすでに起業されていて、好きで始めた仕事だったのに「忙しすぎて何をしているのかわからなくなる」「働いても働いても現状維持が精一杯」そんな状況の方。
ぜひ、このマイケル・E・ガーバーの「成功する人たちの起業術 はじめの一歩を踏み出そう」を読んでいただけたら幸いです。
それでは、クリエイターとしての新しい一歩を踏み出しましょう!
( CREMAGAのこの締めセリフも、この本をリスペクトしているからです)