メーカータイプのクリエイターとはハンドメイド・フィギュア・革製品・陶芸などモノを作って販売する活動をしている方のことです。今回は、クリエイターの段階ごとに見える景色と悩みについてのお話です。クリエイター活動は、好きなことを仕事にできて、夢のような日々でもありますが、今回CREMAGAではあえてリアルなことを書かせていただきます。
- 年商100万円以下
- 年商300万円〜
- 年商500万円〜
- 年商1000万円〜
- 年商3000万円〜
人によって、作品によって様々な景色が見えたり、多様な問題が起きますが、ざっくりとこの五つの段階で分けてご説明したいと思います。扱っている商品は違えど、起こりうる問題には大体パターンというものがあるように感じます。
なお、筆者の体験と周りのクリエイターさんのお話や、過去に知った事例などを元に書いていきます。
少しネガティブな内容になってしまいますが、リアルな気持ちをまとめてみたいと思います。
「メーカータイプのクリエイター」とは何かの記事はこちらをご覧ください。
年商100万円以下
駆け出しのクリエイターとして日々頑張っている時期です。イベントに出てみたり通販を始めたりして、ワクワクする時期です。
その反面、SNSやブログで発信してもほとんど誰にも見られない、なんで作っているのだろう、なんて気持ちになる時期でもあります。
お小遣いレベルには稼ぐことができるから、このまま頑張れば生活ができるようになるかも、と手応えを感じ始めます。
もっと作れば、もっと頑張れば売り上げが上がる。そう感じるはずです。
この時期が一番楽しく、一番辛い時期かもしれません。
この時期に、作品や伝え方、自分の理想のライフスタイルをしっかり描いておきましょう。ここから始まる道は、突き抜けると一気に進むことがあり、考える余裕もなくなってしまうこともあるので、この時期に考えていたことがとても重要になってきます。
年商300万円〜
だんだんと人気が出てきて、作るのが追いつかないように感じる時期です。お店やイベントからも声がかかるようになってきて、どんどん制作する必要が出てきます。
でも頑張れば作れてしまうので、どうにかして一人でひたすらに頑張ります。
もう少し売れれば、生活ができる。もう少し作るペースを上げれば利益も増える。ただ、ひたすらに作り続ける日々が続きます。
商品にもよりますが、一人で制作する限界を感じ始める時期です。この「一人で制作する限界」を早い段階で知っておくことはとても重要です。
筆者は、「もにまるず」という手作りフィギュアを18歳から制作していて21歳の頃に一人で制作する限界を知りました。「もうこれ以上は一人では無理だ」という本当の限界です。この頃から、人を雇うことを考え始めるのです。
そして「この延長線上には年商1000万円はない」と気がつきます。方法を変えないと次のステージに進むことができません。
その方法とは、外注化、もしくはマニュアル化して人を雇って制作をすることです。
年商500万円〜
アルバイトスタッフを雇い、次々と来る注文に対して制作をする日々が続きます。もはや休みは無いような状態です。
アルバイトスタッフを雇ってみたものの、「作業が遅い」「クオリティが低い」という状態に悩まされます。ただ、自分一人で制作をするよりはマシなので手伝ってもらえることで非常に助かりますが、スタッフの戦力化までは少し時間がかかるので、忍耐が必要になってきます。
お金の管理、お店とのやりとりが増え、事務仕事や発送作業が増えてきて、日中は制作以外の仕事でほとんどの時間が過ぎ去ります。
また、アルバイトスタッフが育成されていない時期の場合は、スタッフの時給分を補うために夜も自分で制作をするようになってきます。アルバイトの時給分を自分で稼ぐような状態です。
スタッフを雇うときは、「自分の制作スピードの2〜3倍の時間がかかるかな」と見積もったりしますが、筆者の経験からすると初心者の段階では「5〜10倍」の時間がかかったりします。100間程度の作業をするとやっと2〜3倍くらいのペースになるイメージです。
この段階で考えられる対策は、発送作業の外注化や、マニュアルの整備です。
自分だけにしかできないことを分解して、ひとつひとつの作業だけで見れば、誰でもできるようにマニュアルを制作します。

年商1000万円〜
店舗が増えて、スタッフを増やし、軌道に乗理、だんだんと商売のようになってきます。法人化を検討する時期でもあります。
この段階になると一旦「体力」と「精神」に限界を感じ始めます。やることが多すぎるのです。この段階では、スタッフの育成やマネジメントを中心にしながらも、自分でも制作をしている時期です。
また、月々の資金繰りに苦しむ時期です。店舗が増えるにしたがって、在庫を用意しておく必要があるからです。
30店舗に10万円分の商品を送れば、300万円分の商品が必要になります。
モノを作る商売の場合は、一気に拡大をしようとするとほぼ必ず資金不足になります。
また、利益を積み重ねて仕入れをするようでは時間がかかるため、年商3000万円に近くにつれて金融機関からの借り入れを検討する必要も出てきます。
また、このくらいの規模になってくると、ハンドメイド作家とは何か、という疑問が湧いてきます。
「どこまで自分で作るのか」「作者の自分が作るから価値があるのか」「自分が作らなくても商品自体に価値があるのか」といったことに悩み、価値観を変えないと次のステージに進むことが難しいかもしれません。
また、雇う側、雇われる側の決定的な意識の違いを感じ、過去にアルバイトをしていた時期を思い出して「あの店長さんはすごかったな〜」なんて思います。
年商3000万円〜
上で書いたように、ある程度の量の商品を制作するため、金融機関から借り入れを検討する場合もあるでしょう。利益率が高い商品や、通販だけで成り立っているならその必要は無いかもしれませんが、お店で委託販売していると、お店にある商品だけで数百万円、在庫で数百万円という数字になってきます。
「お金の回収に時間がかかる」という意味が実感でわかってくる時期です。
お金を借りやすいのは、日本政策金融公庫や地域の信用金庫です。
特に、日本政策金融公庫の創業融資制度を利用するとお金を借りやすいでしょう。筆者は会社を創業してすぐに、創業融資制度を利用してお金を借りました。
法人税対策のために収支をトントンにしておく場合もあるかもしれませんが、金融機関からお金を借りる際は黒字でしっかり法人税を収めている方が理想の決算書といえます。
お金を借りるつもりが無い決算書(あえて少しの赤字)と、借りる前提の決算書(黒字にしておく)があるので、借りる可能性がある場合は「借りやすい決算書」になるようにあらかじめ計画を立てておく必要があります。
また、人の問題・資金繰り・今後の計画などで忙殺されます。問題のモグラ叩きのようになってきます。
ここの段階にくると、ハンドメイド作家とは認識されなくなってきて、ブランドとして認知されるようになってきます。ただし、ブランドしては無名なので改めてブランディングや商品について考え始めます。
作家としては活躍しているように見えていて人気も出てきて嬉しい時期ですが、経営者としては初心者なので毎日が大変なことばかりです。
そして「これをずっと続けられるだろうか」「続けたいだろうか」という不安もよぎってきます。
ここを乗り切ると次の年商5000万〜が見えてきます。さすがにここまで来ると「ハンドメイド作家」などの本ではカバーできず、たくさんのビジネス書を読むことになるでしょう。
年商5000万円〜はハンドメイド作家の範疇を超えて、経営になってくるのでCREMAGAではここまでにしたいと思います。
まとめ
ちょっと今回はリアルな内容になってしまいましたが、ざっくりとメーカータイプのクリエイターの段階ごとに見える景色と悩みについてのお話を書きました。80%くらいは筆者の体験です。苦しそうに思えることばかり書きましたが、いや本当に苦しいのですが、楽しいことも同じくらいありますよ!(安心してください)
段階ごとに出てくる問題点というのはだいたい同じです。たくさんの本を読んで学び、「次はこういう問題が出てくるだろうな」と覚悟しておきます。不思議なくらい本当に同じパターンが現れます。
楽しいこと、嬉しいことは作家さんのツイッターやフェイスブックを見ればわかりますよね!好きなことを仕事にできて、夢のような日々でもありますが、今回CREMAGAではリアルなことを書かせていただきました。
大切なのは「覚悟」です。
もう一度言います。「覚悟」です!
それでは、クリエイターとして新しい一歩を踏み出してください!